2025.07.04更新

会社経営が行き詰まり、債務の返済が困難になった場合の対応策として、法人破産という選択肢があります。
法人破産は裁判所を通じて会社を整理し、最終的に法人格を消滅させる制度です。
本記事では、法人破産の基礎知識から具体的な手続きの流れ、必要な期間までを詳しく解説します。

 

法人破産の基礎知識

支払いができない状態や、借金が資産を上回るなどの事情で、会社の運営を続けることができなくなった際の選択肢が法人破産です。
裁判所を通じた適切な手順で会社を整理し、最終的に会社を消滅させる制度です。
裁判所が指名する破産管財人によって、会社の財産を適切に管理し、換金処理を行い、定められた順序に従って債権者へ配分されます。

 

個人(自然人)の破産と法人破産の違いとは

個人が借金の返済に行き詰まった際に選択できる破産は、会社が選択する法人破産とは異なる特徴があります。
法人破産では会社の消滅と同時に債務が無くなる仕組みのため、免責手続きは不要です。
ただし、保有する財産は全て処分対象となります。
一方、個人の破産では裁判所による免責決定が必要となりますが、生活再建のための基礎となる財産を残すことは可能です。
具体的には、日用品や99万円以下の現金、生活保護を受ける権利などが残ります。
また、個人の場合は、未納の税金については支払い義務が継続します。
これは、法人破産との大きな違いのひとつです。

 

代表者も破産をする必要はあるのか?

法人破産をしても、代表者が自動的に破産する必要はありません。
ただし、代表者が会社の借入金などの連帯保証人となっている場合は、債務の支払い義務が個人に移るため、代表者も破産の手続きを検討しなくてはいけません。

 

法人破産手続きの進め方

法人破産は、定められた手順に従って確実に進める必要があります。
以下では、具体的な流れを解説します。

 

弁護士への相談から始める

法人破産は複雑な法的手続を伴うため、まずは弁護士への相談から始めることが重要です。
弁護士と相談することで、法人破産が最適な選択肢なのか、他に有効な方法がないのかを含めて、適切な判断が得られます。

 

法人破産申立ての事前準備を行う

法人破産が最適な選択肢と判断された場合、申立てに向けた準備作業を慎重に進めなくてはいけません。
企業の破産手続きは、個人の場合と比べてより迅速かつ秘密裏に行うことが必要です。
その理由は、債権者に事前に情報が漏れることで手続が混乱する可能性があるためです。また、従業員への情報開示も慎重に行う必要があります。
従業員を通じて債権者に情報が流出してしまうリスクを防ぐためです。
準備作業は弁護士と緊密に連携しながら、速やかに進めていきます。
特に従業員がいる会社の場合、申立ての直前に解雇手続を行うことが必要です。
また、会社財産の流出を防ぐため、収入・支出についても慎重が判断をしなくてはなりません。
このように破産申立ての準備には、細心の注意と適切なタイミングでの対応が求められます。

 

裁判所へ破産手続きを申立てる

必要な準備が整ったら、裁判所へ法人破産の手続開始を申し立てます。
会社の代表者が債務の連帯保証人となっている場合は、会社の破産申立てと同時に、代表者の自己破産も申し立てることが賢明です。

 

債務者審尋が行われる

裁判所は破産手続を開始するための要件を確認するため、債務者審尋を実施します。
この審尋では、裁判官とが、会社が破産申立てに至った経緯や状況について詳しく確認を行います。

 

破産手続が開始され破産管財人が選任される

裁判所が破産開始の要件を認めた場合、正式に破産手続が開始され、同時に破産管財人が選任されます。
管財人の選任により、会社の全ての財産に関する管理・処分の権限は管財人に移行するため、会社が独自に財産を処分することはできません。

 

定期的に債権者集会が実施される

破産管財人は、財産の調査や換金作業、債権者への配当などの実務を進めながら、およそ3か月ごとに債権者集会を開催します。
この集会では、破産手続の進行状況や財産の処理状況について、詳しい報告が行われます。

 

債権者への配当が実施される

破産管財人が会社の財産を換金処分した結果、配当可能な財産が確保できた場合、定められた順序に従い債権者への配当を行います。

 

破産手続が終了する

配当が完了した時点、あるいは配当できる財産がないと確定した時点で、破産手続は終了です。
手続の終了により、会社は法人としての資格を失い、同時に全ての債務も消滅します。

 

破産手続にかかる標準的な期間

破産手続の完了までにかかる期間は、会社の規模や資産状況によって大きく変動します。
一般的な目安は以下の通りです。

 

 弁護士への相談から申立てまで:3~6か月
 申立てから手続き終了まで:3~6か月

 

合計すると、通常は半年から1年程度で手続が完了します。
ただし、売却が困難な不動産がある場合 や債権者との債権額について争いがある場合には期間が長引く可能性があるので注意が必要です。
このような状況では、上記の標準期間を超えることも少なくありません。

 

まとめ

法人破産は、会社の運営が困難になった際の法的整理の手段です。
手続は弁護士と相談しながら慎重に進める必要があり、準備から完了まで通常6ヶ月から1年程度かかります。
会社の債務は手続終了とともに消滅しますが、代表者が連帯保証人の場合は別途対応が必要です。
法人破産を検討する際は、まずは弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

投稿者: 棚田 章弘

entryの検索

月別ブログ記事一覧

カテゴリ

まずはお気軽にご相談下さい! 03-3518-5242 法務ノート よくある質問・Q&A 解決事例