2026.05.12更新

不動産オーナーとして、物価上昇や近隣相場の変動に伴い賃料の増額を検討することは正当な権利です。
しかし、借地借家法は借主保護のため、賃料増額に厳格な要件を課しています。
単に周辺相場が上がったからという理由だけでは認められない可能性があります。
本記事では、賃料増額請求を行うときの要件について解説します。

 

賃料増額請求の法的根拠と借地借家法の趣旨

賃料増額請求の根拠は、借地借家法第32条第1項にあります。
この項は、土地または建物に対する租税その他の負担の増減、土地または建物の価格の上昇または低下その他の経済事情の変動、または近傍同種の建物の借賃との比較により、現在の賃料が不相当となった場合に、賃料の増額を請求できると定められています。
もっとも、このような規定が置かれているのは、借主が大家の一存によって生活や営業の基盤を脅かされないようにするためです。
そのため、賃料の増額を求めるのであれば、法律で定められた事情を明確にし、賃借人に説明したうえで合意を得ることが重要です。
賃料増額請求を検討する際には、借主保護という借地借家法の趣旨も踏まえて対応することが大切です。

 

賃料増額が認められる3つの要件

借地借家法第32条第1項が定める増額の要件は、具体的に以下の3点に集約されます。
これらの要素は裁判実務においても重要視される判断指標です。

 

近傍同種の建物の賃料との比較

賃料の増額が認められる要件として、周辺の同等物件の賃料相場との比較をすることです。
同じエリアで築年数や間取り、設備が類似する物件の賃料水準と比較し、現在の賃料が著しく低いかどうかが判断の要となります。
不動産ポータルサイトの募集事例や、不動産業者からの取引事例の収集が有効です。
ただし、単に相場が高いというだけでなく、当該物件の個別事情も考慮される点に注意が必要です。

 

租税公課等の増減

賃料の増額が認められるケースとしては、固定資産税や都市計画税などの租税公課の増減です。
税負担が増大している事実は、オーナーのコスト増を示す客観的な根拠となり、増額請求の有力な理由となります。
市町村から交付される課税証明書や納税通知書を整理し、契約時と現在の税額を比較することで、増額の必要性を具体的に示すことが可能です。

 

経済事情の変動

オーナー側が賃料増額請求を行える事由として、経済事情の変動が考えられます。
経済事情の変動とは、金利の変動、近隣地域の再開発による環境変化などのことをいいます。
相場上昇の事実だけでなく、当該建物のスペックや維持管理費の実情など多角的な資料が必要です。
客観的な数値データをもとに、現在の賃料がいかに不相当であるかを論理的に説明する準備が重要です。

 

正当な根拠資料の準備と段階的な交渉戦略

増額請求を成功させるには説得力のある資料作りが重要です。
具体的には、不動産鑑定士による鑑定評価書の作成、周辺物件の賃貸募集事例をまとめた資料の収集が有効です。
また、税金の納付証明書を整理しコスト増を可視化することも重要です。

 

借主との交渉の進め方

賃料増額にあたり、早期の解決を目指せるのは、借主の合意を得ることです。
そのため、まずは増額を求める理由を整理し、借主に丁寧に説明することが重要です。
また、賃料増額を正式に求める場合には、通知書などで意思を伝える方法が考えられます。
そのうえで、借主と協議を行い、増額の必要性や金額について話し合うことになります。
交渉では、なぜ現在の賃料が不相当なのかを根拠資料に基づいて説明し、理解を得る姿勢が大切です。

 

強引な増額請求のリスク

オーナーが一方的に賃料の増額を通知し、それに従わないことを理由として当然に契約を終了させることはできません。
賃貸借契約は借主の生活や営業の基盤となるものであり、そのような対応は法的に問題となる可能性があります。
借主の合意が得られない場合には、裁判所の手続を経て判断を求めることになります。
賃料増減額請求については、直ちに訴訟を提起するのではなく、まず民事調停を経る必要があります。
そのため、賃料増額請求を進める際には、最初の段階からその後の見通しも踏まえて準備することが重要です。

 

まとめ

賃料増額請求はオーナーにとって資産価値を正当に反映させるための正当な手段であることを再確認します。
しかし借地借家法が厳格に借主保護を図っている以上、感情的な主張や不十分な根拠での請求はオーナーの不利益を招きます。
賃料増額請求を検討している方は、交渉の前に弁護士へ相談することを検討してください。

投稿者: 棚田 章弘

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