2026.07.15更新

遺産分割をめぐる争いは、親族間の感情的な対立も絡み、解決が難しくなることがあります。
調停は話し合いによる解決を目指す場であり、審判は法的な権利を確定する手続きです。遺産分割はまずは調停による話し合いから始まり、話し合いによる解決ができない場合に審判に移行します。

 

遺産分割における調停と審判の根本的な違い

遺産分割調停は家庭裁判所で行われる手続きであり、裁判官や調停委員を介した話し合いの延長線上にあります。
あくまで当事者間の合意による解決を目指す場であり、不成立となれば自動的に審判手続へ移行します。
この両者は手続きの性質が全く異なり、調停が合意による解決を求めるのに対し、審判は権利義務の確定を求める争訟です。
民法第907条では遺産分割について定めていますが、調停は話し合いによる解決、審判は裁判所による裁判という法的性質の違いがあることを理解する必要があります。

 

遺産分割に調停前置主義は適用されない

離婚訴訟を提起するには、原則として調停を経なければならないという調停前置主義が法的に義務付けられています。
しかし、遺産分割にはこの規定は適用されません。
つまり、調停を経ずに遺産分割審判の申立てをすることも、理論上は可能です。
しかし、だからといってすぐに審判という選択肢が適切とは限りません。
遺産分割の争いにおいて、審判は非常に高度な専門性と時間を要する手続きです。
調停というステップを省くことで、感情的な対立がより先鋭化し、結果として解決までの期間が長期化するリスクも否定できません。
制度上は直接争うことが可能でも、遺産分割においては、まずは家庭裁判所での調停を通じ、争点の整理や客観的な法解釈の提示を受けることが、現実的な解決の近道となるケースが多いのです。
また、審判の申立てをしても家庭裁判所の判断により調停に付されることもあります。
調停による争点整理、客観的な法解釈の提示、感情的対立の緩和といったメリットを考慮し、制度上の自由と実務上の合理性のバランスを見極める必要があります。

 

調停を経ずに訴訟を検討すべきケース

遺産分割の前提となる法的争点が存在する場合、調停では解決できず訴訟が必要となります。

 

遺産の範囲や権利関係に争いがある場合

遺産分割の前提となる権利関係そのものに争いがある場合は、調停では解決できず訴訟が必要となります。
遺産に含まれる不動産の名義が実は他人のものであると主張されている場合や、特定の相続人が遺産の範囲を否定し続けている場合などは、調停の枠組みでは解決できません。
これらは遺産確認訴訟の対象となり、まずは遺産の範囲を確定させなければ分割協議にすら進めないからです。
遺産確認訴訟では、何が遺産に含まれるのかという前提問題を地方裁判所などで争うことになります。

 

遺言書の有効性や共有物分割が争点の場合

遺言書の有効性を争う場合や、遺産の共有状態と相続以外の理由のよる共有が併存する場合の共有不動産の分割など、民法上の権利関係が複雑に絡む場合も訴訟が検討されます。
単なる遺産の取り分の不満ではなく、法的な権利そのものが否定されているような場合には、最初から専門的な法廷闘争を見据えた戦略的な対応が必要となります。
共有物分割訴訟は、共有状態を解消するために民法第258条に基づき提起される訴訟であり、遺産分割とは別の法的手続きとなります。

 

遺産分割が審判に発展する原因

遺産分割が訴訟へ発展する典型例は、証拠の不一致と権利意識の衝突です。
特に、生前贈与の有無や寄与分の主張が対立する場合、証拠に基づいた客観的な立証が求められます。
調停であれば委員が間に入ることで譲歩を引き出せることもありますが、証拠が極めて乏しい場合や、相手方の主張が法的に論理性を欠く場合には、調停での解決は困難です。

法的トラブルが争訟に発展する最大の要因は、当事者が自身の正当性を譲れないまま、客観的な法的根拠を欠いた主張を繰り返すことにあります。

 

まとめ

遺産分割をめぐる争いは、親族間の感情的な対立も絡むため、解決の糸口が見えにくいものです。
重要なのは、調停と審判の役割の違いを理解することです。調停は話し合いによる解決を目指す場であり、審判は法的な権利を確定するための手続きです。
調停前置主義がないからといって安易に審判を選択すると、時間や費用の負担が大きくなる可能性があります。
そのため、まずは弁護士に相談し、話し合いで解決すべきか、法的手続きが必要な段階かを見極めることが重要です。

 

投稿者: 棚田 章弘

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