2026.10.08更新

相続で借金が見込まれるとき、検討すべき方法は相続放棄だけではありません。
限定承認を使えば、プラスの財産の範囲でのみ債務を弁済し、残った財産を受け取れます。
ここでは、相続放棄との違いと、限定承認を検討すべき場面を紹介します。

 

限定承認と相続放棄はどこが違うのか

どちらも家庭裁判所への申述が必要という点は同じですが、その後の扱いは大きく分かれます。

 

手元に残る財産の範囲が違う

限定承認では、債務を弁済したあとに財産が残れば、その分を相続人が取得できます。
一方、相続放棄をすると、借金だけでなく預貯金や不動産などのプラスの財産も受け取れません。
財産と債務のどちらが多いかわからない場合に、プラスの財産が残る可能性を残せる点が限定承認の特徴です。

 

全員でするか1人でできるかが違う

限定承認は、共同相続人の全員が共同して申述しなければなりません。
1人でも単純承認を望む相続人がいれば、限定承認という選択は取れなくなります。
一方で相続放棄は、他の相続人の意向にかかわらず自分だけで申述できます。
なお、相続放棄をした人は初めから相続人でなかった扱いになるため、残った相続人の全員で限定承認を申述する形も可能です。

 

次順位の相続人への影響が違う

相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われます。
その結果、同順位の相続人全員が放棄するなどすると相続権が次の順位へ移り、被相続人の親や兄弟姉妹が債務への対応を求められる可能性があります。
限定承認では相続人の地位が残るため、次順位へ相続権が移ることはありません。
親族を巻き込みたくない事情があるなら、この違いは判断材料になります。

 

手続きの負担と税務の扱いが違う

相続放棄では、相続財産の清算手続は必要ありません。
限定承認では、財産目録の提出、債権者への公告・催告、財産の換価・弁済といった清算手続が必要です。
また、含み益のある一定の資産について、被相続人にみなし譲渡所得が生じることがあります。
その場合、準確定申告は相続開始を知った日の翌日から4か月以内に行う必要があり、3か月の申述期限と並行して対応することになります。

 

限定承認を検討すべきタイミング

限定承認は、債務の全体像がわからない場合や、残したい相続財産がある場合に検討されます。
相続放棄より手続きが複雑なため、財産と債務の状況を踏まえて判断することが大切です。

 

債務の総額がつかめないとき

被相続人が事業を営んでいた場合や生前に疎遠だった場合は、保証債務を含めて債務の全体像を把握できないことがあります。
単純承認をしたあとで多額の借金が判明すれば、相続人が自分の財産から支払う立場に置かれます。
限定承認をしておけば、後から債務が出てきても、受け継いだ財産の範囲を超えて支払う必要はありません。

 

自宅や事業用資産を手放したくないとき

限定承認では、相続財産の換価は競売が原則です。
ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額を支払えば、自宅や事業用資産を取得できる場合があります。
残したい財産があるときは限定承認が選択肢になりますが、評価額を支払う資金が必要です。
また、抵当権が設定された不動産では、抵当権者による競売を止められない場合があります。

 

財産調査が3か月以内に終わらないとき

限定承認も相続放棄も、原則として、自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に申述しなければなりません。
この期間内に財産と債務の調査が終わらないときは、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられます。
伸長の申立ては3か月が過ぎる前にしなければならず、期限を越えてからでは原則として受け付けられません。

 

選択を誤らないための注意点

限定承認や相続放棄を検討している間は、相続財産の扱いに注意が必要です。
行動によっては単純承認とみなされ、選択できなくなる場合があります。

 

相続財産を処分すると限定承認できなくなる場合がある

相続財産を処分すると、原則として単純承認をしたものとして扱われます。
この扱いになると、限定承認も相続放棄も選べません。
預貯金の解約や自動車の名義変更、相続財産を自己のために使用する行為は、内容によって処分と判断されるおそれがあります。
社会通念上相当な範囲の葬儀費用の支出は問題になりにくいものの、線引きは事案によって変わります。

 

相続放棄のほうが向いている場面もある

債務が明らかに財産を上回り、残したい財産もないのであれば、相続放棄のほうが手間はかかりません。
限定承認では清算手続や公告、鑑定などに費用がかかるため、残る財産が少なければ負担が見合わないこともあります。
他の相続人の協力が得られない場合も、限定承認は現実的な選択肢になりません。
不動産や株式に大きな含み益がある場合は税負担も生じ得るため、費用や手間だけでなく税務面まで含めて判断する必要があります。

 

まとめ

限定承認と相続放棄は、残る財産の扱いも手続きの重さも異なる制度です。
債務の全体像が見えないときや残したい財産があるときは、限定承認を検討する価値があります。
棚田法律事務所では、限定承認や相続放棄の選択に関するご相談を承っております。
3か月の期限が迫っている方は、まずはお気軽にご相談ください。

投稿者: 棚田 章弘

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