2016.06.01更新

前回の記事では,夫が不倫相手に対して遺贈する旨を記載した遺言が公序良俗に反して無効とされた例を挙げました。

 

しかし,事実上破綻しており,籍は入っているけれども,実態は夫婦とは言えない場合には,結論が異なってくる場合があり得ます。

 

仙台高裁平成4・9・11は,離婚していない夫婦の夫から内縁の妻に対する遺贈を有効であると判断しました。

この事例では,以下の点が考慮されて有効と判断されたものと思われます。

1 遺言者である夫と妻は婚姻関係にはあったが,妻との不仲が続いており,別居期間も長く,夫婦関係は事実上破たんしていた。

2 遺言者は,生前に妻に対して,居住する土地建物の遺言者持分を贈与していたほか,退職金のうち1000万円を贈与していた。

3 遺言者と内縁の妻と同棲は,遺言者と妻の婚姻破綻より後のことであった。

4 遺贈の対象となっている土地建物は,別居後に遺言者が購入したものであること

5 遺言者の遺贈の意図は内縁の妻の将来の生活保障にあったこと

 

個人的には,大きく影響するのは,妻との間の婚姻関係が継続していたと認められるかどうか,相続人への影響の大小などの事由であると考えます。

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.05.17更新

自分が浮気して,別居した場合に,他方の配偶者に婚姻費用(生活費)の請求はできるのでしょうか。

これについては,先例として東京家庭裁判所の平成20年7月31日の審判があります。

この事案は,以下のようなものでした。

 夫婦の間には,長女が一人。

 妻が勤務先の男性と不倫関係になり,不倫相手のアパートで暮らすようになった。

 後に,妻は賃貸マンションを賃貸し,長女を引き取って生活していた。

このような事案で,裁判所は以下のように判断しました。

 別居の原因を自ら作り出した妻は,自らの生活費にあたる分の婚姻費用の請求は権利濫用となり許されない。

 請求できるのは,未成年の長女の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまる。

 

自ら不貞行為をしながら,婚姻費用の請求をできるとするのは,一般人の感覚からずれているといえ,

裁判所は,子どもの監護養育費用の請求しか認めませんでした。

 

別居の原因を作り出した者からの婚姻費用の請求は制限されることが一般的といえるでしょう。

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.05.13更新

相続人が亡くなった場合,預金は,当然に法定相続分に従って,各相続人が取得するものとされています。

このため。理屈のうえでは法定相続分に限り,預金を引き出すことはできることになります。

 

もっとも,銀行は,被相続人の死亡が明らかになった段階で,預金を凍結します。

銀行とすれば,そのまま引き出せるような状況にしておくと,相続人が法定相続分を超える額を引き出して使ってしまうことがありうるからです。

もっとも,銀行が死亡の事実を知らなければ預金口座は凍結されることなく,ATMなどで引き出されてしまう。ということも起こりえます。

 

預金の引き出しに関しては,葬儀費用を支出するために,被相続人の死亡後に預金を引き出した,という事例が多くみられます。

しかし,引き出した預金の使い道についてきちんと説明できない場合,紛争に発展するケースがあります。

 

このため,被相続人の死亡後に,預金を引き出してしまった,という場合には,

その引き出した預金の使徒をしっかりと説明できるよう。領収書などの支出を証明する資料を保管しておくことが重要となります。

投稿者: 棚田 章弘

2016.04.18更新

建物の賃貸借契約の場合,原則として借地借家法の規定の適用があります。

この法律によって,賃貸期間を契約で定めても,原則として賃貸借契約は更新されてしまい,期限を定めても必ず立ち退いてもらうということができません。

立ち退いてもらうためには,「正当事由」が必要とされていますが,この正当事由があるというためのハードルが高いのが実情です。

 

しかし,一定期間をもって,賃貸借契約を終了させることへの需要が大きいため借地借家法は,「定期建物賃貸借」という方式を用いることで,更新がない賃貸借契約を認めています。

もっとも,定期建物賃貸借契約は,書面で作成し,契約の更新がないことを明記すること,期間満了により賃貸借契約が満了することを書面を交付して説明するななど一定の要件が必要となります。

 

また,契約書の作成だけではなく,定期賃貸借契約の満了の1年前から6か月前までに期間満了によって賃貸借契約が終了することも通知するといった手続的な要件も必要になります。

 

とはいえ,定期建物賃貸借契約は,期間の満了により,更新なく賃貸借契約を終了させることができるため,うまく活用することによって,不動産の有効活用を図ることができます。

投稿者: 棚田 章弘

2016.04.14更新

遺言で,すべての遺産を特定の人に与えるという内容の遺言があった場合,もらえなかった相続人は,遺言で遺産を得た人に対し,遺留分を請求することができます。

遺留分とは遺言をもってしても奪うことのできない相続人の権利と言われます。

遺留分は,配偶者(夫,妻),直系卑属(子),直系尊属(父母)に与えられる権利で,兄弟姉妹には遺留分はありません。

 

遺留分は,遺産を取得した人に対して遺留分を行使する旨の意思表示をすることによって,権利行使をします。

意思表示の方法はどんな方法でもよいのですが,遺留分の請求をしたことの証拠を残すために内容証明郵便で行うのが一般的です。

投稿者: 棚田 章弘

2016.03.24更新

亡くなった人(被相続人)が死亡した場合の相続人は,

第1順位・・・子

第2順位・・・尊属(親)

第3順位・・・兄弟姉妹

となり,配偶者(夫・妻)は常に同順位の相続人になります。

 

子供しかいない場合には。相続人はすぐにわかりそうな気もしますが,

実は隠し子がいた・・・というような場合も考えられます。

 

そこで,実際には,亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍・改製原戸籍・除籍をたどって,

相続人が誰であるかを調査していくことになります。

 

戸籍等は,市役所・区役所などで入手することになります。

本籍地を転々としている場合には,それぞれの地域を管轄する役所へ戸籍の申請をすることになるので,

時間がかかることもあります。

 

戸籍の見方は慣れないとわからないこともありますので,

専門家に確認してもらうのも一つの方法です。

投稿者: 棚田 章弘

2016.03.22更新

離婚の際,相手方に対しては財産分与を請求することができますが,

離婚をすでにしてしまった後でも財産分与の請求はすることができるのでしょうか。

 

実は,民法768条2項は,財産分与の請求期間について,

「離婚の時から二年を経過したときは」財産分与を請求できないとしており。

離婚後でも財産分与の請求をできることになっています。

このため,離婚の際に,財産分与を意識することなく離婚した場合でも,

その後に財産分与を請求することが可能になります。

 

もっとも,離婚後に財産分与を請求する場合,

元配偶者の財産の状況を把握していないまま離婚したという場合がありえます。

この場合,これから離婚する場合に比較して調査をすることができないため,

財産分与の請求が若干難しくなるという場合がありえます。

 

財産分与を請求したいという場合には,離婚前から配偶者の財産を調査しておくほうがよい結果が得られやすい,という傾向にあります。

投稿者: 棚田 章弘

2016.03.20更新

残業代を請求するにあたって,重要になるのは,どのくらいの時間の残業をしていたかになります。

ご存じのとおり,残業代の請求は時間単位で計算をします。

このため,どのくらいの時間働いていたかは,残業代を請求するにあたって一番の核となり,

この時間が証明できなければ,裁判手続で残業代が認められない結果にもつながりかねません。

 

では,どのように残業時間を証明することになるのでしょうか。

手段としては

・タイムカード

・送受信した電子メール(メールの送信時間)

・業務日報

・シフト表

・出退勤表

・パソコンを立ち上げと立ち下げのログデータ

などを用いて証明した事例があります。

 

いずれも,退職してしまった後は証拠として入手しにくいものです。

残業代を請求したいという場合には,退職する前に出退勤の証拠資料を集めておくことが重要になります。

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.02.23更新

前回の記事に記載しましたように,訴訟の相手方にお金がない場合には,

仮に,勝訴したとしても,何もお金が回収できなかった・・・ということにもなりかねません。

また,訴訟をしている間に,相手方がお金を隠してしまう・・・ということもよくあります。

お金のありかを隠されてしまうような場合,回収が困難になってしまいます。

 

そこで,訴訟をする前に,「保全」という手続を執ることによって,

相手方の財産関係を仮に確定し,相手方が財産を隠したりできないようにすることができます。

保全のなかでも,「仮差押え」という手続であり,銀行の預金口座,不動産などを「仮に」差し押さえることができる手続になります。

 

仮差押えのメリットは,あらかじめ強制執行に備えて財産を仮差押えできることから,

勝訴したときの回収がスムーズになります。

また,法律上の効果ではありませんが,仮差押えすることで,相手方が和解を申し出てくることもあります。

 

仮差押えのデメリットは,担保金が必要になることです。

債権額の2~5割の金額を法務局に供託することが仮差押えの条件となります。

このため,手元資金がない場合には,仮差押えをすることは難しくなります。

 

供託金というデメリットはありますが,

のちの強制執行を考えた場合,供託金を用意できるのであれば,仮差押えをしておくメリットは大きいといえます。

投稿者: 棚田 章弘

2016.02.20更新

相手方に裁判で勝ってお金を請求したい。

これは,裁判をやるからには当然にみなさんが考えることです。

しかしながら,実際にお金が回収できるかどうかは相手方がお金をもっているかどうかにかかわってきます。

お金を持っていない人からお金を回収するのは極めて困難です。

定職についている人であれば,給料を差し押さえることによって回収ができるかもしれませんが,

会社を辞められてしまった場合には新しい就職先を調査しなければなりません。

 

また,裕福な暮らしをしている相手方であっても,財産がどこに存在するのか知らない場合には,

やはり回収は難しいです。

 

このため,相手方の財産がどこにあるのかの事前のリサーチも裁判の前提として欠かせません。

職場はどこなのか,使っている銀行(支店)はどこなのか,不動産や有価証券は持っているのか,

このあたりの事情は調べられるのであれば,調べておきましょう。

 

裁判で勝訴の見込みがあるとしても,実際の勝訴後の回収の目途が立たないのであれば,

和解で終わらせることも十分に考えるべきでしょう。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

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