2016.09.22更新

遺言書を作成することは死後の相続に関する争いをできる限り現象させるものでありますから,

自分が亡き後の親族紛争を防止するという点では有効な手段となりうるものです。

 

しかしながら,遺言書を作成したとしても,その遺言の中身によっては,紛争防止の目的が果たせないものもあります。

例えば,遺留分を侵害するような遺言をしてしまった場合です。

 

ここで遺留分とは遺言書をもってしても剥奪することができない相続人の利益のことをいいます。

ある相続人に自己の遺産のすべてを相続させたとしても,他の相続人には遺留分があるために,

他の相続人が遺言により遺産を受け取った相続人に対して,遺留分の請求をすることができるのです。

その結果,遺留分請求によって,新たな紛争が生じてしまい,紛争防止という遺言の目的が果たされなくなった例もままあります。

 

遺留分は,兄弟姉妹以外の相続人が有する権利です。

遺留分は,

直系尊属(父・母・祖父母など)が相続分の場合には,遺産の3分の1

その他の相続人の場合は,遺産の2分の1

とされています。

 

被相続人がA,相続人が妻C,子のC,Dという事例で考えます。

この事例で,Aが妻Cにすべてを相続させるという遺言をしたとします。

この場合,遺留分は,2分の1になります。そして,各相続人は,この2分の1を法定相続分で分け合いますので,

C(法定相続分は4分の1)が遺留分を請求した場合,

2分の1×4分の1=8分の1

がCの遺留分ということになります。

 

Aの遺産が土地建物しかない場合,遺言によって,土地建物の名義は一度はBになりますが,

Cから遺留分減殺請求権が行使された場合,土地建物の8分の1がC名義となってしまいます。

 

このように,遺言によって,遺産分割の指定をする場合,遺留分を考えずして遺言の内容を決めても,

紛争防止にならない可能性があります。

 

遺言書を作成するときは必ず遺留分について考えておきたいものです。

投稿者: 棚田 章弘

2016.09.20更新

認知症を発症している人でも遺言書を作成することはできるのでしょうか。

結論から言うと,認知症を発症していても,遺言書を作成することは可能です。

 

遺言者が成年被後見人となっている場合には,医師2名以上の立会が必要です。

医師が遺言を作成する能力を欠いていないことを遺言書に付記して押印すれば有効な遺言書となります。

 

成年被後見人でない場合,遺言者の精神状態には差があり,軽度の場合もあれば,中程度の場合もあります。

遺言書を作るときの精神状態によりますが,遺言の内容を十分理解し,作成できるだけの精神状態にあれば,

有効な遺言を作成するjことは可能です。

 

もっとも,有効な遺言書を作成できるだけの能力があったとしても,遺言者が認知症を発症している場合には,

後日になって,他の相続人から遺言が無効である旨の主張がなされる可能性は高いといえます。

このため,遺言を作成する前の段階で,主治医に遺言を作成することができるだけの精神状態にあることの診断書を作成してもらったり,

遺言者が遺言書を作成するときの様子をビデオ撮影するなどの工夫をしておくことが重要になります。

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.29更新

遺言書があるかないかは相続手続をする際に,大きな分かれ道です。

そこで,遺言書を探すのはどうしたらよいでしょうか。

まず,自筆遺言証書の有無ですが,これは被相続人の遺品を探すしかありません。

亡くなられた後,なるべく早めに遺品整理を行い,自筆証書遺言の有無を確認しましょう。

貸金庫や懇意にしていた有資格者(弁護士,司法書士など)に預けている場合もありますので,

心当たりがあれば当たってみましょう。

 

次に,公正証書遺言の有無ですが,最寄の公証役場でその存在を確認することが可能です。

被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本類,自分が相続人であることを示す戸籍類を持参して,

問い合わせを行えば,遺言書の原本が保管されている公証役場を回答してくれます。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.29更新

遺言書があるかないかは相続手続をする際に,大きな分かれ道です。

そこで,遺言書を探すのはどうしたらよいでしょうか。

まず,自筆遺言証書の有無ですが,これは被相続人の遺品を探すしかありません。

亡くなられた後,なるべく早めに遺品整理を行い,自筆証書遺言の有無を確認しましょう。

貸金庫や懇意にしていた有資格者(弁護士,司法書士など)に預けている場合もありますので,

心当たりがあれば当たってみましょう。

 

次に,公正証書遺言の有無ですが,最寄の公証役場でその存在を確認することが可能です。

被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本類,自分が相続人であることを示す戸籍類を持参して,

問い合わせを行えば,遺言書の原本が保管されている公証役場を回答してくれます。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.25更新

自筆証書遺言の場合,遺言書に遺言執行者の指定が記載されていないものはままみられます。

民法では,遺言執行者の指定がない場合,遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てることができるとされています。

しかし,遺言執行者の指定がなくても,必ず遺言執行者選任しなければならないかというとそうではありません。

遺言の内容によっては,遺言執行者を立てずとも,不動産登記を行うこともできるため,遺言執行者の選任が不要な場合もあります。

遺言執行者の指定がない場合でも,まずは,弁護士に相談し,遺言執行者が必要かどうか相談してみることがよいでしょう。

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.11更新

遺言の一要式として,自筆証書遺言というものがあります。

これは,遺言書のすべてを直筆で書くことを要求される遺言書です。

 

では,遺言者が自ら書いてはいるけれども,家族などが遺言者が遺言を書く際に,手を添えて書かれたような遺言は,

有効な自筆遺言証書といえるでしょうか。

 

これについて判断した例として,最判昭和62・10・8があります。

最高裁は,第三者の手を添えて書かれた遺言が有効であるといえるためには,

①遺言者が遺言時に自書能力を有すること

②他人の添え手が単に始筆,改行,文字の間配り,行間を整えるために手を添えたり,添え手が筆記を容易にするために添えられたものであること

③添え手をした他人の意思が介入した形跡がないことが筆跡のうえで判定できること

が必要であるとしました。

 

このうち,①の自筆能力とは,文字を知り,これを筆記する能力のことで,

本来読み書きができたものが,病気,事故などによって資力を失ったり,手が震えたりして,他人の補助を要することになっても,

特段の事情のない限りは失われないものであると判断しています。

 

このように,家族の手を添えられて,遺言が書かれたとしても,上記①~③の条件があれば,遺言は有効になるといえます。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.08.09更新

遺言が有効になるための条件はいくつかあります。

まず,15歳以上であることが必要です(民法961条)

次に,成年被後見人などであったとして,意思能力(物事を判断することができる能力)がある限りは,遺言をすることが認められます。

しかし,遺言者に意思能力がなかった場合には,遺言は無効になります。

意思能力がない,もっとも代表的な例として,認知症を発症している場合があります。

ところが,認知症といっても,その症状の重さには程度があり,軽度であれば,意思能力があると判断されることもあり,

一方で,重度の認知症であれば,意思能力がないものとして,遺言は無効となります。

 

このため,遺言が有効になるか無効になるかは,認知症の程度によって変わってくるといえます。

過去の裁判例には,遺言者が認知症を発症していても有効とされた例,無効とされた例の両方があります。

 

いざ,遺言が有効かどうかが争われる場合には,裁判になることが多いと思われます。

遺言が有効だと主張する側は,遺言者が意思能力を有していたことを証明する必要があります。

例えば,遺言当時の遺言者が筆記したメモ,手紙や会話の受け答えの記録,診断書などの証拠を用いて,立証することになります。

 

逆に遺言の無効を争う側は,遺言者が意思能力がなかったことを示す証拠を提出していくことになります。

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.07.05更新

自筆遺言証書が封されている場合,法律は家庭裁判所で開封しなければならないとされ(1004条3項),

裁判所外で開封した場合には5万円以下の過料に処するとされています(1005条)

このため,遺言書を見つけたら開封しないで裁判所に検認の申し立てをしなければなりません。

 

では,もし,開封してしまった場合はどうなるのでしょうか。

なかから出てきた遺言書そのものだけで有効な遺言書といえるだけの体裁を整えていればよいのですが,

入っていた封筒などの入れ物と一体で初めて遺言書と判断されるような場合には,

開封することで,遺言書が無効となってしまう可能性があり,実際,開封したことでもって遺言書が無効であるとした裁判例があります。

 

有効になるか,無効になるかは,事案ごとの判断ということになるのでしょうが,

原則に従って,開封は裁判所に検認申し立てを行うことによってすべき,ということになります。

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.06.29更新

不倫相手に自分の亡き後に遺産を遺贈するという内容の遺言は有効なのでしょうか。

この点,古い判例ですが,大審院昭和18年3月19日判決は,遺言者が死ぬまで妾として同棲することを条件として金銭を遺贈するとの遺言は公序良俗に反するものであるとして,無効としています。

 そのほかにも,福岡地裁小倉支部の昭和56年4月23「日判決は,不倫関係にある女性に遺産の10分の3を与えるとする遺言を公序良俗に反するものとして無効としています。

同判決は,遺言者が妻と通常の夫婦関係が続いていたこと,不倫相手が遺言者と苦楽をともにしているわけでもなく,家族以上の世話をしていたわけでもなかったこと,不倫相手が遺言者の生前から相当程度の経済的援助を受けていたことなどを理由に遺言を無効としています。

同判決は,上記のような事情にかんがみて,遺言を無効としたので,不倫相手に対する遺贈=無効という単純な図式にはならず,遺言が有効になる余地はありそうではありますが,基本的に,夫婦関係が破綻していない状態で,不倫相手に遺贈したり,遺贈の目的が不貞の継続を目的とするものであったりする場合には,上記の結論に至ることが多いと思われます。

なお,夫婦関係破綻後であった場合には,別の結論になりえますが,こちらは次回に解説したいと思います。

投稿者: 棚田 章弘

2016.06.15更新

借家人が死亡した場合,借家人について相続が発生します。

借家人(賃借人)が死亡し,複数の相続人がいる場合には,共同相続となります。

共同相続は,民法上,共有とされているため,賃借人の地位が法廷相続分に分かれて相続されることになります。

例えば,2名の子の共同相続人がいる場合には,2名がそれぞれ2分の1ずつ割合で賃借権を有することになります。

では,請求できる賃料は,2分の1だけかというとそうではなく,それぞれの相続人に対し,全額を請求できます。

(ただし,契約賃料以上の額を請求できるわけではなく,誰か一人が全額支払ったら,ほかの相続人には請求できません。)

賃貸人としては,お金を払ってくれるだけの資力がある相続人に請求すればよいわけです。

 

では,相続人が賃料を支払ってくれない場合の解除はどうすればよいでしょうか。

この場合,相続人の一人に対する催告は,他の相続人との関係では効果がなく。

相続人の全員に賃料を支払うよう催告する必要があります。

そして,契約の解除の通知も共同相続人の全員に対してしなければなりません。

 

このため,借家人(賃借人)に相続が発生したときに,契約の解除をするには注意して解除手続を踏まないと,

催告したはいいが,全員にしていなかったためにやり直しが必要になってくる場合があります。

投稿者: 棚田 章弘

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