2016.01.18更新

当事者の話し合いで決めた養育費であっても,調停で決めた養育費であっても。一度当事者が合意で定めた養育費の額は契約としての効力が認められます。

よって,原則的には,一度決めた養育費の額はそのまま継続するということになります。

もっとも,離婚後に子や父母の生活環境が変わることは十分にありますし,その変化次第では,養育費の額を変更することが養育費を払う側,もらう側にとって公平な場合もあり得ます。

そこで,いったん養育費の額が決定されたとしても,事後に事情に変更が生じたときは,養育費の額は変更できるものとされています。

 

では,どのような事情がある場合に,養育費の額の変更は認められるのでしょうか。

この点,一般的には,養育費を支払う者,養育費をもらう者の職業上の地位の変化,父母の資力の増減,父母の再婚,子と再婚相手との養子縁組,新たな子の誕生など家族構成の変化,物価変動,生活水準の向上などの様々な事情の変化を総合的に考慮するとされています。

 

そして,これらの事情の変更が養育費の額の決定の際に考慮されていたかどうか,また,将来の予測が可能であったかどうか,そして,そうした事情の変更が重要なものかどうか,といった点を考慮して,養育費を変更すべきかどうかが決められます。

 

投稿者: 棚田 章弘

2016.01.11更新

養育費は定期払が原則ではありますが,養育費を払う側ともらう側が合意をすれば,一括でもらうことも可能です。

では,養育費を一括でもらって,それを使い切ってしまった場合,もう一度養育費をもらうことはできるのでしょうか。

 

この点,調停手続による決定の場合でも,当事者の話し合いによる場合でも,当事者は,お互いが納得のうえで決めた合意内容には拘束されることになります。

そして,養育費の一括払いの合意が,その後の養育費の再度の請求を許さない旨の内容と判断される場合には,養育費の再請求は認められません。

 

もっとも,養育費は,子供の養育のために支払われるという性質のものですから,さまざまな事情の変更によって,養育費が不足し,子供の監護養育に不利益が生じる場合にまで,再度の請求が認められない,となるとそれは酷というものです。

このため,一括払い時には想定できなかったような相当な事情の変更があったといえる場合には,事情変更があったとして,再度の養育費の請求が認められる,と考えられます。

もっとも,事情変更があったかといえるかは,それぞれの事件に応じて判断されます。

 

過去のケースでは,養育費の一括払いを受けていたが,子供を私立中学校,学習塾に進学させたために,養育費を使い切ったという例で,私立学校,学習塾に通わせた場合には,高等教育を受ける以前に養育費を使い尽くすことは容易に想定できた,として,養育費の再度の支払請求を認めなかった例があります。

投稿者: 棚田 章弘

2016.01.08更新

養育費は,毎月の定期払で支払われることが望ましいとされています。

このため,裁判所を利用した審判手続で養育費を定める場合には,一括前払いは認められにくい傾向にあります。

 

もっとも,養育費を支払う義務者と養育費をもらう権利者がお互い納得のうえで合意した場合にまで一括払いを否定する理由はありません。

このため,養育費を一括で支払うという内容の合意が成立すれば,一括で養育費を受け取ることも可能になります。

 

結局,話し合い,調停の場で,養育費を払う側ともらう側がお互いに一括払いにしましょう,と約束した場合に限って,一括払いが認められることになります。

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.12.14更新

男女雇用均等法の指針及び通達ではセクハラとは,

「性的な言動」

「就業環境が害される」

ことがその判断基準とされています。

 

もっとも,上記の基準は画一的に判断できるものではないため,最終的には個別的な事情をもって判断することになります。

国家公務員については人事院規則で例が挙げられており,非常に参考になります。

性的な発言としては

・スリーサイズは?」など身体的特徴を話題すること

・体調が悪そうな女性に対して「今日は生理日か?」、「もう更年期か?」などの発言をすること

・性経験や性生活についての質問、性的な噂を立てたること

・性的なからかいなど

・「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などの発言

・「男の子、女の子」、「おじさん、おばさん」などの人格を認めないような呼び方

性的な行動関係としては,

・ヌードポスターを貼る

・食事やデートにしつこく誘う

・性的な内容の電話をかけたり、性的な内容の手紙・電子メールを送る

・身体に不必要に接触する

・性的な関係を強要する

性による差別意識に基づくものとしては

・女性であるというだけでお茶くみ、掃除、私用等を強要する

・宴席でのお酌や、カラオケでデュエットを強要する

などがあります。

 

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.12.11更新

よく「口約束でも契約は成立するの?」との質問を受けます。

実際のところ,一部の例外を除いて,口約束でも契約は成立します。

契約は原則的には「意思表示の合致」で成立するからです。

売買でいえば,「○円で売ります。」「○円で買います。」という反対方向の意思表示が合致することで

契約は成立するわけです。

もっとも,売買でいえば,目的となる物の特定と金額は一番基本的な要素なので,

物が分からないのに買う,金額又はその算定方法が決まっていないのに買う,というものでは意思表示の合致とは言えません。

 

契約のなかでも保証契約など特別の類型については,書面での契約であったり,物の引渡しがないと契約成立しないものもあります。

 

しかし,多くの契約は,口頭の約束で契約が成立してしまうため,録音などされている場合にはこれが証拠となってしまいますのでご注意ください。

 

 

 

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.12.08更新

親の死亡後に親に借金があったことが判明した,という事例は多くあります。

どのような手続を選択するかはまさしく借金の額によることになります。

 

借金の額が遺産の額より少額の場合には,単純承認で問題ありません。

相続した財産から借金を返済して,残りを相続人で分けることになります。

 

一方,借金の額が遺産より多い場合には,通常,相続放棄の手続をとることになります。

原則的には相続があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄の手続を裁判所に申述することになります。

もっとも,一部の財産を自分のものにした場合などは,単純承認をしたとみなされてしまいますので,

相続放棄の手続が終わるまで遺産には手を付けずにおきましょう。

 

借金の額が遺産の額を超えるかわからない,という場合には,限定承認という方法もあります。

これは相続により得た財産の範囲でしか負債を相続しない,というものです。

もっとも,限定承認の手続は相続放棄よりも複雑で面倒なものが多いです。

このため,相続開始から3か月以内の間にしっかりと調査をしておくことが重要です。

調査に時間が足りない場合には,家庭裁判所に対して期間の延長を請求することも検討することができます。

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.12.05更新

例えば,ご両親のうち1人が認知症を発症している場合で,親名義の賃貸不動産があったとします。

新規の入居申込があった場合,親の代わりに契約しても問題はないのでしょうか。

法律上,契約をするには,意思能力(物事を正常に判断できる能力)が必要になります。

したがって,認知症を患って判断能力がない場合,本人は契約をすることはできません。

また,親の代わりに別の人が契約をしても,本人の契約でない限り,有効な契約にはなりせん。

収益浮動s何を持つ方が認知症などにより判断能力を失った場合には,成年後見制度を用いて後見人を選任することになります。

そして,後見人は,認知症を発症した方の代理人として契約を締結することになります。

後見制度を用いずに親の財産を管理する場合,後に親族間の紛争にも発展しかねません。

このため,成年後見人の選任手続を執られることを強くお勧めします。

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.12.03更新

破産を検討しているけど不安な方の相談に会社にばれないのか,というのがあります。

この点,直接的に会社に破産をしたことが知られてしまうことは少ないです。

会社に破産することを報告する義務もありませんし,会社も破産それ自体を理由に解雇することは違法な解雇になる可能性があります。

一点だけ,会社との関係で,必要なこととして,退職金の有無を調査する必要があり,

この点で,会社との接点がでてきます。

会社に退職金の額の証明書,または退職金がないことの証明書を出してもらう必要があるからです。

もっとも,労働契約書に退職金がないことが記載されていれば,労働契約書を提出すれば足りますので,

会社に何らお願いすることなく手続を進めることも可能です。

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.10.19更新

破産手続は,破産の決定を受けた者の財産を処分,換価して,債権者に配当する手続きです。

しかし,破産者の生活の立て直しも破産法の目的であり,すべての財産が処分・換価の対象となるものではありません。

ぜいたく品でない家財道具など一定の範囲のものは破産者のものとして残されることとなります。

また,一定の範囲の預金や現金の一部は破産者の手元に残されますので,無一文になるということでもありません。

投稿者: 棚田 章弘

2015.10.17更新

離婚して子供の親権を得た場合,他方の親に対して養育費を請求することができます。

養育費は,合意によって決まれば合意によって決定した額になります。

 

一方,合意により決まらなかった場合には,調停,審判によって決まります。

調停,審判により決定される額は,「婚姻費用・養育費算定表」を用いる場合が多いです。

同算定表は裁判所のWEBページで入手することができます(「養育費 算定表」と検索すると表示されます。)。

算定表では子供を監護する親(権利者)と監護していない親(義務者)の収入金額との比較により金額が定まります。

 

もっとも,算定表は原則論であり,個別事情も考慮のうえ決まりますので,必ず算定表によって決まるわけではありません。

 

投稿者: 棚田 章弘

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