2015.06.02更新

専業主婦の妻が夫と別居する場合,その生活費をどうするかが問題となります。
この点について,民法760条は,婚姻期間における生活費の負担について,「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しています。
 上記の例でいえば,この民法760条に基づいて,妻は,夫に対し,生活費の支払いを請求することになります。
 もちろん,妻のほうが収入が大きく,夫のほうが少ない場合は,妻のほうに生活費の支払義務が課されることもありえます。
 この生活費の分担義務は,夫婦生活が破たんしていても,離婚をしない限り分担義務を免れえないのが原則です。ただし,破綻について責任がある配偶者(有責配偶者)からの請求は一定の制限がなされる場合があります。
 
 では,具体的にどうやって生活費の分担が決まるかというと,一次的には夫婦間の協議により決まり,協議がまとまらない場合に,家庭裁判所の審判で決まることになります。
 一般的には,最初にお互いの話し合い,調停,審判という手順をとることになります。
 
 では,具体的にいくらになるのか?というと,家庭裁判所において,生活費分担の算定表が作成されており,特別の事情がない限りは,この算定表に基づいて婚姻費用の分担が決まることが多いといえます。

投稿者: 棚田 章弘

2015.05.20更新

例えば,浮気をした夫が妻に対して離婚請求をする場合,つまり,離婚原因を自ら作り出した配偶者から離婚を請求できるか,という問題があります。

 

自分から浮気をしておきながら,自分の浮気を理由離婚できるとするとそれは明らかに不公平ですね。

このため,最高裁は,昭和27年2月19日の判決で,不貞行為をした夫から妻への離婚請求を「不徳義」であるとして退けました。

 これが「踏んだり蹴ったり判決」といわれたもので,「もしかかる請求が是認されるならば、妻はまったく俗にいう踏んだり蹴ったりである。法はかくのごとき不徳義勝手気侭を許すものではない」として,最高裁は,浮気した夫からの離婚請求を認めませんでした。

 

 もっとも,その後,有責配偶者からの離婚請求を一切認めないのは妥当でない,として,昭和62年9月2日の判決で,別居期間などの一定要件を満たす場合には,有責配偶者からの離婚請求を認めています。

 どのような事情により,有責配偶者からの離婚の請求が認められるかは個別具体的な事情によりますが,別居期間の長さや幼い子供がいるかどうかが一つの目安となります。

 別居期間の長さは,少なくとも5~6年,事情によってはそれより長期が必要になります。事情によっては短い期間で認められる可能性はありますが,少なくとも1~2年の別居期間では難しいといえるでしょう。

投稿者: 棚田 章弘

2015.05.08更新

配偶者が働かないこと,または,浪費をすることによる離婚が認められることがあります。

 

不労については働かない理由がどのようなものかによって離婚が認められるか判断されます。

単に職についていないことだけをもって離婚原因になることはありません。

失業しても就職活動しているのであれば勤労意欲はあり,夫婦の共同生活を維持しようという意思はありますから離婚の理由にはなりません。

また,働いてはいるが収入が少ないことも離婚理由にはなりません。

病気による一時的な休職も同様です。

 

浪費は,収入に見合わない程度の浪費であれば,離婚が認められやすいといえます。

なお,借金を理由とする場合には,その借金の理由,借金の額,収入との比較,夫婦の財産状態などにより離婚が認められるか判断されます。

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.05.06更新

他方配偶者が犯罪をしたことを理由とする離婚請求は認められるでしょうか。

 

犯罪行為を理由とする離婚請求が認められた事例は存在しますが,犯罪行為の内容,罪の軽重,犯罪行為が生活に与えた影響によって結論は左右されます。

軽い罪の犯罪の場合には認められにくくなるでしょうし,重い罪で服役したことで生活に支障が生じた場合には,扶養できなくなったことによる生活苦が理由により離婚が認められやすくなります。

投稿者: 棚田 章弘

2015.05.04更新

夫又は妻が他方の親族と仲が悪い場合,これを理由に離婚できるでしょうか。

 

嫁姑問題のような親族不和も事案によっては離婚理由となりえます。

ただ,単に仲が悪いだけでは直ちに離婚が認められるというわけではありません。

 

嫁姑問題の場合などは,夫が妻と姑との間の関係が悪いことを認識しつつ放置するなど関係改善の努力をしなかったり,関係悪化を助長するかのような行為をしていた事実があると離婚は認められやすくなります。

また,親族との不和があることで婚姻関係を継続させるのが酷と判断される程度である必要があります。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.05.03更新

夫婦の一方が宗教に夢中になったことが離婚する原因として認められることもあります。

 

もっとも,夫婦の両者とも信仰の自由が認められますので,特定の宗教を信仰いていることだけで離婚が認められることはありません。

その信仰が社会生活上通常の範囲に留まる限りはこれを理由として離婚することはできません。

 

宗教を理由とする離婚が認められた場合として,他方配偶者や家族に対してまで自分の信仰する宗教の教義を押し付けたり,

家族の行事よりも宗教的行事を優先するなど,宗教的活動をすることで,家族の生活に不都合が生じる場合が挙げられます。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.05.01更新

いわゆるセックスレスがある場合も離婚する原因になります。

また,セックスレスではないけれども,性生活が一般的ではない場合がには,

これも離婚原因になりえます。

 

セックスレスの場合,期間や性交渉拒否の理由,セックスレスに至った経緯などが離婚のできるかどうかの判断要素になります。

 

性生活が一般的ではないような事例としては,

例えば,着衣のままの性行為を要求し,妻がそれについて拒否をしても,

反復継続して妻の意思に反してそのような性行為を要求するような場合などが挙げられます。

この事例は,妻の意向を無視していることを問題視しているもので,

たとえ性的嗜好が一般的でなかっとしても,夫婦間でお互い納得するものであれば,離婚原因にはなりません。

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.04.30更新

直接的な暴行でなくても,心理的虐待を原因とする離婚も認められます。

この場合,暴言,間接的な暴行(家具を壊すなど),執拗な電話などといった行為が積み重なって離婚の原因となります。

家庭内の心理的暴行については,なかなか証拠が集めにくいところがありますから,

理的な虐待が行われていることについて記録をつけたり,録音するなどして証拠を残しておきたいところです。

投稿者: 棚田 章弘

2015.04.23更新

婚姻を継続し難い重大な事由というのが離婚の理由(離婚の原因)のなかで最も広い範囲をカバーするものになります。

 

裁判で争いになった事例としては,

性格の不一致

心理的虐待

性生活の不一致

宗教

親族不破(嫁姑問題など)

身体的欠陥(交通事故による身体障害)

犯罪行為

就職しない(不労),無駄遣い(浪費)

などがあります。

 

今回は性格の不一致について記述します。

 

性格の不一致は離婚の動機として多くの人が挙げるもので,実際に男女別の離婚の動機を見ると,

男性は

第1位 妻と性格が合わない

第2位 妻の異性関係

第3位 妻と夫の親族との折り合いが悪い

女性は

第1位 夫と性格が合わない

第2位 夫が暴力振るう

第3位 夫の異性関係

 

となっており,男女ともに1位が性格の不一致です。

性格の不一致も離婚原因にはなりえるもので,性格の不一致を理由とした裁判上の離婚が認められた事例も存在します。

しかし,性格の不一致にも程度があり,些細な不一致を理由に裁判上の離婚をすることは難しく,性格の不一致の程度が相当ひどい,という場合でなければ裁判上の離婚は難しいでしょう。

協議離婚,調停離婚によって離婚する場合が多い離婚原因といえます。

 

 

投稿者: 棚田 章弘

2015.04.13更新

離婚をする場合,お互いの話し合いによる場合は,どんな理由でも構いませんが,

相手方が協議に応じない場合には,離婚をするための理由(離婚原因といいます。)が必要になります。

 

離婚原因は,民法770条に記載されており,

この離婚原因がなければ,相手方の意思を無視して離婚することはできません。

 

離婚原因は,

1 不貞行為(浮気・不倫)

2 悪意の遺棄

3 3年以上の生死不明

4 回復の見込みのない強度の精神病

5 その他婚姻を継続し難い重大な自由

とされています。

 

1 不貞行為

  質問にあがることが多いのが

  「1回の浮気でもダメなの?」

  「風俗に行くこともダメなの?」

  というものです。

  1回であっても,風俗であっても該当します。

  セックスレスで拒否されたので,風俗に行ったというものであっても同様です。

2 悪意の遺棄

  たとえば,夫または妻が家から出て行って生活費も支払わないような場合が挙げられてます。

3 3年以上の生死不明

  客観的に3年以上音信普通であればよいのですが,あまり事例としては多くはありません。

4 回復の見込みのない強度の精神病

  強度の精神病ですので,「うつ」のような軽度なものでは認められません。

  回復不能であることも必要です。

5 その他j婚姻を継続し難い重大な事由

  離婚をしたいという動機は人さまざまであり,上記の1~4以外のものがここに含まれることになります。

  暴力,虐待,犯罪,性的異常,セックスレス,嫁姑問題などの親族不破,宗教などといったものが挙げられますが,

  このその他婚姻を継続し難い重大な事由は争いになることが多いので,別項で取扱いたいと思います。

 

 

 

  

 

 

投稿者: 棚田 章弘

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